9月8日の新聞報道

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舞鶴市・パーム油発電所計画 「建設用地紹介」「港湾計画変更」京都府が後押し/京都議定書発効の地なのに・・・温暖化対策に逆行

大量の温室効果ガス排出が問題視されているパーム油を燃料に用いた発電所建設計画が舞鶴市の舞鶴港で進められている問題で、京都府が建設用地の紹介や発電所設置が可能となるように港湾計画を変更するなど同計画を後押ししてきたことが、分かりました。国が、パーム油発電を「再生可能エネルギー」として固定価格買取制度(FIT)の対象としていることが問題の大本にありますが、温室効果ガス削減を定めた「京都議定書」発効の地として、地球温暖化対策に逆行する計画を「支援」する府の姿勢が問われています。
温室効果ガス大量排出が問題視
 建設計画をめぐって、府、舞鶴市は、発電事業実施の意向を持った民間企業に対し、施設の設置に適当な候補地の情報提供を行っていました。結果、舞鶴港の府所有地(合計3・8ヘクタール)が建設予定地となりました。その後、府は、発電所建設を可能とするため、舞鶴港湾計画で定められた土地利用計画の変更などを行っています。
 府エネルギー政策課によると、一連の経過の中で、検討されてきた発電所の種類は、輸入パーム油を用いたバイオマス発電所だったと説明しています。
 もともと今回の計画は、同市内に工場を持つ日立造船(以下、同社)が検討を進めてきたものです。始まりは、同社が工場敷地内で委託を受けて運営・管理していたディーゼルエンジンを用いた火力発電所が契約満了にともない16年に停止したことです。同社では発電所運営の実績を生かすことともに、雇用継続のために発電事業の継続を模索していました。
 発電所停止にともない、舞鶴市は地域での雇用が失われるなど地域経済への悪影響を懸念し、京都府は地域経済振興と府北部での再生可能エネルギー普及を目的に、それぞれ同市内での発電事業継続の要望を同社に伝えていました。こうしたもと、同社は、同市内でのバイオマス発電所の建設に向けた検討を進めてきました。
 最終的に同社は、燃料調達などのノウハウが不足していることから事業主体となることを断念。外資系企業などが出資する合同会社が事業者となり、同社は、発電所の建設・運営・保守を行う計画となりました。
 輸入パーム油の最大の問題は、温室効果ガスの大量排出です。原料となるアブラヤシ栽培のため、東南アジアなどで熱帯雨林が伐採されるとともに、伐採後の土壌から温室効果ガスが大量に排出されています。
 そのため、パーム油発電は、「再生可能エネルギーとして位置付けるべきでない」と識者は指摘しています(本紙8月25日付既報)。
 府は、専門家の指摘は認識しているとした上で、パーム油はFITの対象であり、「国の基準に基づき、同様に扱っている」と説明します。
立地促進へ補助制度も
 さらに今回の計画とは別に、府ではパーム油を含むバイオマス発電所の立地促進を掲げています。17年8月には、舞鶴市内でのバイオマス発電所などの建設・増設を対象に上限1億円の補助制度を創設。18年3月には「京都舞鶴港スマート・エコ・エネルギーマスタープラン」を策定し、同港でのバイオマス発電所の立地促進などを掲げています。
■パーム油発電の問題点考える/13日・舞鶴市西公民館
 パーム油発電の地域住民への影響や環境破壊問題について考える学習会が13日午後6時半から、舞鶴市の舞鶴市西公民館201会議室で開かれます。主催は、熱帯雨林を守る活動に取り組む「ウータン・森と生活を考える会」など3団体。
 バイオマス発電の問題に関わる環境団体や専門家が講師を務め、アブラヤシ農園開発にともなう熱帯雨林や生態系の破壊、大量の温室効果ガスの排出、また劣悪な農園の労働環境など問題点を示すとともに、望ましい地域エネルギーのあり方を考えるため、「パーム油の原産地で起きていること」「パーム油発電の持続可能性とFIT」と題した2つの講演が行われます。
 舞鶴市でのパーム油発電所建設計画と騒音・悪臭問題が起きている福知山市のパーム油発電所について、現地報告が行われます。
 参加無料。参加は申し込み制。☎090・8145・1146(石崎さん)/メールcontact-hutan@hutangroup.org。

京都民法

8月25日の新聞報道

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舞鶴市に国内最大規模パーム油発電所計画 西舞鶴港の一画、民家も近接/温室効果ガスを大量排出、環境保護団体が見直し要望

舞鶴市喜多地区の舞鶴港の一画で、パーム油を燃料とする国内最大規模のバイオマス発電所の建設計画が進められています。専門家は、パーム油による発電は温室効果ガスを大量に排出するため再生可能エネルギーとしてふさわしくないと指摘するとともに、近隣住民からは生活への影響を懸念する声が上がっています。
インドネシアから燃料輸入
 事業者は、再生可能エネルギーの開発・投資などを行うカナダの企業「Amp」が出資する「舞鶴グリーン・イニシアティブ合同会社」です。発電施設の建設・運営・保守は日立造船などに委託するものです。出力は一般家庭約12万世帯分に相当する66㍋㍗で、発電した電気は売電します。2020年6月に着工し、22年11月から商用運転を開始する予定です。
 パーム油はインドネシアから船で発電所近くに運ばれてきます。年間約12万㌧の油を使用する計画です。
 この発電方法をめぐっては、原料となるアブラヤシの農園開発のため熱帯雨林が伐採されていることや長距離輸送にともなう燃料消費などで、大量の温室効果ガスを排出することが識者や環境保護団体に指摘されています。
 舞鶴市での計画についても、環境保護団体「WWFジャパン」が7月に事業計画の見直しを求める要望書を国や同市、日立造船などに提出しています。
 事業者は、パーム油について、国際的な認証を取得した持続可能な燃料としていますが、WWFジャパンは要望書で同認証では排出される温室効果ガスの算定手法が不完全で燃料としての持続可能性は担保されていないと指摘しています。
 また、周辺住民からは施設稼働に伴う騒音などへの不安の声も上がっています。建設予定地の付近には住宅地もあり、最も近いところで約10㍍の距離に民家があります。住民からは、「決まったことのように計画が進んでいるようだが、騒音や臭いの対策はどうするのか、不安が大きい」という声が上がっています。
 福知山市では、稼働中のパーム油発電所の騒音・悪臭が問題となっており、近隣住民が地域を上げて対策を求める事態となっています。

「再生エネ」とは言えない/日本環境学会元会長 和田武さん
 パーム油を用いたバイオマス発電の環境面での問題点について日本環境学会元会長の和田武氏に聞きました。
天然林伐採し長距離輸送も
 最大の問題は、温室効果ガスの排出量が非常に多いことです。化石燃料を使っての長距離輸送であるとともに、アブラヤシ栽培のために天然林が伐採されています。伐採により土壌から二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスが大量に排出されます。
 こうした結果、トータルの温室効果ガス排出量は石油火力発電並みとなります。輸入のパーム油を用いた発電を再生可能エネルギーと位置づけることはやめるべきです。
 パーム油は安く調達でき、取り扱いやすく発電施設も安価です。そのため、収益アップを目的にした企業参入につながっています。
 また、大規模な発電計画が進められる背景には、国の固定価格買取制度(FIT)の影響もあります。当初、買い取り価格が発電規模によらず一律であるため大規模な事業ほど有利なのです。
 国内森林資源を用いる発電でも、最初は大規模発電が普及の主流でしたが、燃料を供給する広大な森林を必要とし、市町村単位では取り組めませんでした。私は当時、調達価格等算定委員の一人として、小規模でも収益性が見込めるよう規模別の買い取り価格を採用するよう求めました。その結果、2015年度以降、国内森林資源を用いる発電では、2㍋㍗以上と未満の2区分の価格が設定され、2㍋㍗未満の発電が増え始めています。
 宮城県気仙沼市では震災復興を目的に、地域の森林資源を活用した木質ガス化発電が行われています。群馬県上野村では、地域おこしに「きのこセンター」を設け、電力や熱を木質ガス化発電から供給しています。これらの事例は、地域資源を活用し、地域の課題解決や雇用創出を伴う経済振興につながっています。再生可能エネルギーは本来、このようにして温室効果ガスを削減し、地域の自立的発展をうながすものです。

京都民法WEB