8月25日の新聞報道

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舞鶴市に国内最大規模パーム油発電所計画 西舞鶴港の一画、民家も近接/温室効果ガスを大量排出、環境保護団体が見直し要望

舞鶴市喜多地区の舞鶴港の一画で、パーム油を燃料とする国内最大規模のバイオマス発電所の建設計画が進められています。専門家は、パーム油による発電は温室効果ガスを大量に排出するため再生可能エネルギーとしてふさわしくないと指摘するとともに、近隣住民からは生活への影響を懸念する声が上がっています。
インドネシアから燃料輸入
 事業者は、再生可能エネルギーの開発・投資などを行うカナダの企業「Amp」が出資する「舞鶴グリーン・イニシアティブ合同会社」です。発電施設の建設・運営・保守は日立造船などに委託するものです。出力は一般家庭約12万世帯分に相当する66㍋㍗で、発電した電気は売電します。2020年6月に着工し、22年11月から商用運転を開始する予定です。
 パーム油はインドネシアから船で発電所近くに運ばれてきます。年間約12万㌧の油を使用する計画です。
 この発電方法をめぐっては、原料となるアブラヤシの農園開発のため熱帯雨林が伐採されていることや長距離輸送にともなう燃料消費などで、大量の温室効果ガスを排出することが識者や環境保護団体に指摘されています。
 舞鶴市での計画についても、環境保護団体「WWFジャパン」が7月に事業計画の見直しを求める要望書を国や同市、日立造船などに提出しています。
 事業者は、パーム油について、国際的な認証を取得した持続可能な燃料としていますが、WWFジャパンは要望書で同認証では排出される温室効果ガスの算定手法が不完全で燃料としての持続可能性は担保されていないと指摘しています。
 また、周辺住民からは施設稼働に伴う騒音などへの不安の声も上がっています。建設予定地の付近には住宅地もあり、最も近いところで約10㍍の距離に民家があります。住民からは、「決まったことのように計画が進んでいるようだが、騒音や臭いの対策はどうするのか、不安が大きい」という声が上がっています。
 福知山市では、稼働中のパーム油発電所の騒音・悪臭が問題となっており、近隣住民が地域を上げて対策を求める事態となっています。

「再生エネ」とは言えない/日本環境学会元会長 和田武さん
 パーム油を用いたバイオマス発電の環境面での問題点について日本環境学会元会長の和田武氏に聞きました。
天然林伐採し長距離輸送も
 最大の問題は、温室効果ガスの排出量が非常に多いことです。化石燃料を使っての長距離輸送であるとともに、アブラヤシ栽培のために天然林が伐採されています。伐採により土壌から二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスが大量に排出されます。
 こうした結果、トータルの温室効果ガス排出量は石油火力発電並みとなります。輸入のパーム油を用いた発電を再生可能エネルギーと位置づけることはやめるべきです。
 パーム油は安く調達でき、取り扱いやすく発電施設も安価です。そのため、収益アップを目的にした企業参入につながっています。
 また、大規模な発電計画が進められる背景には、国の固定価格買取制度(FIT)の影響もあります。当初、買い取り価格が発電規模によらず一律であるため大規模な事業ほど有利なのです。
 国内森林資源を用いる発電でも、最初は大規模発電が普及の主流でしたが、燃料を供給する広大な森林を必要とし、市町村単位では取り組めませんでした。私は当時、調達価格等算定委員の一人として、小規模でも収益性が見込めるよう規模別の買い取り価格を採用するよう求めました。その結果、2015年度以降、国内森林資源を用いる発電では、2㍋㍗以上と未満の2区分の価格が設定され、2㍋㍗未満の発電が増え始めています。
 宮城県気仙沼市では震災復興を目的に、地域の森林資源を活用した木質ガス化発電が行われています。群馬県上野村では、地域おこしに「きのこセンター」を設け、電力や熱を木質ガス化発電から供給しています。これらの事例は、地域資源を活用し、地域の課題解決や雇用創出を伴う経済振興につながっています。再生可能エネルギーは本来、このようにして温室効果ガスを削減し、地域の自立的発展をうながすものです。

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